スクランブルメソッド
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スクランブルメソッド

谷崎泉/笠井あゆみ

数年前の笠井あゆみ先生の表紙画の麗しさ

ネタバレ
2023年5月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 物語の中でも現実でも、人は他者の命をいとも簡単に奪います。幾ら、名探偵や刑事が犯人を見事に見つけ出したとしても、失われた命は帰らず、その命を思って悲嘆にくれる人の数は数多です。架空の物語なのに、読む人の心の中には実在する人のように感じられて、悲しみや憤りを覚えます。時の経つのと共に忘れ去っていくものだとしても、確かに共感した心は私たちの中にあるのです。
この小説は、三話からなっています。
一話目は、音喜多が初恋の女性に酷似した容貌の久嶋に必然的偶然に出会い、彼に近づきたいと画策して、事件に巻き込まれた彼を自分の人脈を使って助ける話です。
二話目は、お返しのように、窮地に陥った音喜多を久嶋が助ける話です。ここでも、音喜多の人脈の人物が力を貸してくれます。
三話目は、久嶋の勤める大学の大学院生の案件に纏わる話です。久嶋は音喜多と彼の人脈の人物の助けを借りて、刑事事件のいきさつを立証します。
それぞれの話の合間に音喜多は久嶋の日常に深く関わっていきます。
細かい所を指摘すれば、潤滑剤を何時の間に用意したとか、何故いつも避妊具をしないのかとか誠実なようで思いやりが無い音喜多が見えてくるのですが、久嶋が別に気にしていないのならいいのでしょう。
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