手切れ金をもらったので旅に出ることにした
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手切れ金をもらったので旅に出ることにした

海老エビ子/白崎小夜

金を内包する青

ネタバレ
2023年5月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 世の中、他人のする事が何故だか気になって口や手を出す人が結構居ますが、他人の幸せは基本的にその人に任せましょう。
口出し・手出ししてもほとんどの場合は恨まれるか嫌われるか…結果は良いものではありません。
幸せも求めるものも結局その人自身のものであって他人のものではないですし。
自分の正義が全てではないんですよね。
確かに王女は普段、極端に我儘というわけではないのかも知れないけれど、発揮してはいけない核心の部分で我儘を発揮してしまったかな、と。
最大にして最悪な失敗です。
最初から勝ち目のない戦いではあったけど、そのやらかしで大好きだったジオくんに最高に嫌われてフラれる羽目になってしまいます。
罵倒されて魔力と殺気で威圧され結果気絶…気の毒と言えば気の毒ですが…まあそれで少しは人の気持ちを考えるようになれるのでは?とも思います。
人間、痛い目に遭わなければ成長もしませんから。
さて、主人公は周りの人の評価も幼馴染みからの自分への恋心も基本無頓着に受け流すレイルくん。
とても美しい孤高の人です。
そんなレイルくんを幼い頃から一途に想い続けたジオくんの粘り強さと自制心の強さは賞賛に値します。
ようやくようやく全ての想いを交わし合えた時、彼は火を纏いながら未来永劫変わらない愛を誓います。
凄まじいほどの純愛です。
2人のお互いを思い合う気持ちがとても尊いものに思えました。
休みが欲しかったジオくん、王女の護衛を買って出て、その出先で金を内包する青い石を目にした時に大切なレイルくんをずっと包み守って行く自分を重ねたのでしょう。
死ぬまで、いえ死んでからもきっと、心に火を抱く愛しい兄弟に変わらぬ愛を捧げ続ける、美しい2人の物語です。
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