空の出会う場所で
」のレビュー

空の出会う場所で

井上ナヲ

海が静かに空を映す、鏡のような凪の時

ネタバレ
2023年5月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 死体の処理を仕事とする二人が依頼のあった屋敷に行くと、3体あるはずの死体が1つしかありません。とりあえずその1体を運び出す仲間と別れた男が自分の車に戻ると、おかしな少年が乗り込んでいます。少年は空と名乗り、身一つで無一文で行く所もないからアンタの家に連れて行ってくれと言うのでした。名前を訊く空に、男は名前なんてないし必要ないと言います。そんな男に空は凪という名前をつけてくれます。凪の時には海が静かに空を映し、空と空とが出会う運命的な名前だと空は嬉しそうに言うのでした。そして凪と空との生活が始まります。優しいけれど寡黙で何を考えているのかわからない凪と、図々しいようでスレていない空はどちらも訳ありで寂しい存在です。出逢うまでのそれぞれの過去と共に、凪の海が空を映すようにゆっくりと変化する二人の微妙な心のグラデーションが描かれます。最後に恋人として初めてのキスをする静かできれいなお話です。
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