屍と花嫁
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屍と花嫁

赤河左岸

一蓮托生、命を終えるその時まで…

2023年5月19日
架空であれ実在であれ民族色の強いモノはあまり好きではないのですが、美しい表紙とBLにしては珍しいダークミステリー仕立てに惹かれてポチリ。帯アリ帯ナシ、両方の装丁が見られて嬉しいです✨ 100年チョイ前くらいの中華圏を舞台にしたお話でしょうか。ある旧家で腹違いの兄弟の跡目争いに端を発して婚礼の最中に事件が起こった、 らしい。… らしい?に始まり、傷?誰?どうなってるの?… からの、Q&Aちょっと早くない?理路整然感が強くない?とは思いましたが、なるほど!大陸の文化や迷信を活かした上手い構成だな~と感心しました。謀略や兄の正体等、不穏なものが散りばめられていますが思いの外 軽やかな印象なのは、お互いを想い合い支え合って生きて来た清廉な兄弟愛と、自己犠牲を厭わない無償の愛、兄弟の内面にフォーカスして描いているからかな?そして 読み返すと弟の表情や台詞の裏側を知り、兄を大切に想い慈しむ様子や小さな触れ合いに嬉しくなり頬を赤らめる様にジワリと胸が熱くなる。また 白い息を吐いていない、寒さを感じない、肌に触れる手を「ひどく」熱く感じた等、伏線を潜ませるのが上手いな~と。ひっそりと、ちゃんと特性を描いていたんですね。痛みを感じないのに気持ち良い事は感じるのか~、血が巡らないのに一点集中でソコは充血するのか~と フフッとする設定はありますが、色事は別モノって事でしょうか?😍 ただ、舌や身体に触れる度に現実を突き付けられて辛くないのかな、と… いや、隣にいてくれるだけで幸せなんだよね。血脈に抗って愛を貫く美しい物語。自分の身体の秘密を知りそれを愛おしく思う兄の表情、しがらみを捨てて旅立つ2人の姿にグッとくる。そして どんな存在でも弟でいたいと願う純粋さ、蓮の池の水面に映る2人の姿がとても美しくて尊く感じました。爽やかで優しいラスト、兄弟に祝福を!… 一方で惜しいと思うのは、美しい絵ではありますがメリハリと熱量に欠けた印象を受けるので、人間の業の深さや正気を失った兄の描写をもっとダークに描いて魅せて欲しかったな、と。「無菌室の美」と言うかイラスト的な印象を受けました。 あと「蓮の花が咲く頃」の弟を ちゃんと年齢を重ねた面持ちで描いて欲しかったです。それは2人の行く末を暗示する大切なものだと思うから。→ 電子限定描き下ろしのラストの写真に。ちょっと悲しくなるけれど、寄り添う姿に胸アツです。甘い「薬」を最後まで…😊
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