許可証をください!
」のレビュー

許可証をください!

烏城あきら/文月あつよ

仕事の話ばかりしてるのにおもしろい

ネタバレ
2023年5月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作品の熱さと魅力にやられた。最初読んだときは文体に慣れなかった部分もあったのだが、ふとした時に思い出して読み返したくなって、好きなシーンは読めば読むほどぐっとくる。
ほぼほぼ仕事の話でしめられているのに、小難しく感じられた単語も読み飛ばすことなく強くひきこまれて読んだ。作品全体に、この社会がいろんな人の仕事で成り立ってるんだなという爽やかさみたいなものが充満してて読んでて気持ちよかったし、尊敬しあえる相手と一緒に仕事できる幸せみたいなものも感じられて、眩しくて心が洗われた。弘と前原が、大企業よりおもしろそうだからという理由で中小企業である喜美津化学を選んだというこの二人のセンスみたいなものも好き。不完全な会社を自分たちでよりよくしていく喜び、困難を乗り越えた先にある達成感、こういう感覚って最高。

仕事の話の間に、要所要所で前原(攻め)と弘(受け)がくっつく前のぎりぎりの緊張感みたいなものも盛り込まれていて、それがまたいい。前原がぐっと弘との距離を縮めようとするその間合いというか、じりじりした感じがすごくよかった。弘が出張先から前原に電話してしまうシーン(前原の優しい声に萌)、弘が出張から戻り行先もわからずバイクに乗せられていくシーンとか、弘を部屋に引っ張り込むために前原が必死で書いた配排水系図のあたりのやり取りとか(最後に前原視点の話が入るのがほんとよい)、ドキドキするシーン、大好きなシーンがいっぱいある。弘が迷いながら拒絶しながら結局前原との行為に夢中になって、でもそんな自分を許せない弘と、迷ってる弘を飲み込もうとするような前原の強引さ、1作目の緊張感大好き。
それにしてもまだ20代の二人が、今の職場に骨をうずめるような覚悟でいることが新鮮だったというか。前原が同じ会社に30年後もいるつもりで話をしていること、そしてそれをごく当たり前のことのように考えていることが妙に印象に残った。

2023年11月追記:この作品について誰かと語り合いたいと思っていたら、シーモア島でいろんな方とお話する機会がもてた。1巻をよかったといってくださる方のコメントがとてもとてもうれしかった。久しぶりに読み返したら、弘の「前原さん」呼びが感慨深かった。そうだ、二人はここから始まったんだった。

(メーカーがとても好きだと思った、、、誰に?)(キリンもゾウもころばないですんだ、、)
いいねしたユーザ5人
レビューをシェアしよう!