嵐を呼ぶ台風!?
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嵐を呼ぶ台風!?

烏城あきら/文月あつよ

弘もそれだけじゃ足りないとこまできた

ネタバレ
2023年5月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ ふと気づくと再読したくなる。再読したときの自分の気持ちのありようで、なんか違った味わいを感じる。
シリーズ3作目、今回は渇水と台風の問題が工場を襲う。
3作目は、弘が前原に対して、完全に恋人としての感情を自覚するという大事な場面がある。私はくっつく前の、くっついたようなくっついてないような緊張感が好みなので、初めて3作目を読んだとき、ああとうとう完全に恋人になっちゃうんだなーなんて寂しい気持ちがなきにしもあらずだったのだけれど、とはいえ弘の気持ちの変化とか、態度の変化にはやはりぐっとくるものがあった。
仮眠室、布団からふっと漂う前原の匂い、に思わずたかまる弘。そこに狙いすませたかのように現れる前原。こういう忙しい時間の合間にがまんできなくってことに及ぼうとする感じ、たまらない。あと、鍵のエピソードもよかったなー。「これを使わないでください」だなんて、弘の迷いとか微妙な気持ちがよくわかるよ。
最後の前原視点の話での、弘が自分から前原にキスして「ダメかな?」なんて誘うあたりのやり取りも、すごくいいじゃないか。「前原さん」なんて呼んでた弘がね!やるね!
今回弘は、今まで自分にとって前原との関係があくまで仕事上での前原とのつながりを前提としていて、単純に恋愛感情に基づくものではなかったのに、ここにきて、同僚という関係では満足できなくなってしまった自分に気づく。この辺の弘と前原のやり取りがとてもいい。そもそも最初は仕事がなければ前原との関係なんて意味ないと思っていたと言い切った弘、なんか新鮮に感じた。ほんとここまで仕事にベクトルが向いてる受け最高。仕事での高揚感が欲情につながるのって私はなんかすごく理解できるし、別に悪いことでもないと思ってるんだが、それだけじゃ満足できないとこまで愛情を育てられたら、すてきだよなー。

それにしても前原と弘はほんと真面目でひたむきで努力をいとわない。こういうのはまぶしくて、ほんといい。困難を前に誰かに安易に甘えることなく自分で何とかしようと懸命に立ち向かう、ほんといい。そしてエロ重視な私が今回もエロ以外の部分の方も楽しんで読めたのは自分でも意外だった(もちろんエロも相変わらず非常によいです!!!)。3作も続けて仕事ばかりしてる攻めと受けの話を読むなんて、このエロ脳の私が耐えられるのか、と思ったら耐えられるどころか完全に心とらわれてしまった。
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