未来の記憶 風の行方
」のレビュー

未来の記憶 風の行方

国枝彩香

シリーズ2作をまとめた350頁超の力作

ネタバレ
2023年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校教師の熊谷健人は同僚の春日先生にプロポーズしてフラれてしまいます。熊谷は、たまたまその場にいた綺麗な男性とヤケ酒して誘われるままに情熱的な一夜を過ごします。翌朝男性は姿を消していましたが、熊谷の学校に美術の代理教師としてその男性•香月瑛が赴任してくるのでした。お互いに驚くものの、その後歓迎会で酔っ払った香月を送って行った熊谷は、泣きながらユージと名を呼ぶ痛々しい香月を再び抱くのでした。3年前に恋人を亡くしたという香月と幼い頃に両親を亡くした熊谷との心が初めて通じ合います。ところが直後に香月の好きなユージは生きていて、相手がノンケで告ることもできなかった香月の長い片思いだったことがわかります。ノンケの熊谷とゲイの香月、二人は育った環境から考え方、服のセンスまで悉く相容れないのですが、ちゃんと自分の考えや感じたことを言葉にしてぶつかりながら寄り添ってゆきます。各話のタイトルが伏線となったりテーマとなったりして綴られるお話は、時にコミカルに時にシリアスに、キャラもストーリーも揺るぎなく20年前という古さを感じさせない佳作です。
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