ガンダムを舞台にしたサスペンス物語





2023年6月14日
いわゆるガンダム作品というとニュータイプな主人公がガンダムに乗って敵ライバルとバトルする、というのがステレオタイプであるが、この作品の主人公はパイロットですらなく、終戦末期に起こったとされるクーデターの謎を徐々に解き明かすサスペンス物である。それでガンダム好きが満足するのか?と思うところではあるが、これが大変満足できる。この作者は人物や背景設定にかなり凝るタイプで、最初はその設定の細かさが鼻につく感覚も持つが、ストーリーが進むにつれ設定が活き出し状況や心理描写の違和感の無さと共に説得力を増し、作品に深みを与えていく。その独自設定と原典である富野作品との融合も高次元でマッチさせており、その辺りがガンダム好きであれば間違いなく満足する素養となっている。個人的に特に感嘆したのは、作品内の時期と同時期に起こった設定の「ポケットの中の戦争」まで取り込み作品中で影響を与えている点である。これには脱帽した。この作者の構成力には驚くばかりであり、間違いなくガンダムエースでトップレベルの漫画家の一人であろう。

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mitter7 さん
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