アンティミテ
」のレビュー

アンティミテ

一穂ミチ/山田2丁目

心によく効くブレーキを持っていると大変ね

ネタバレ
2023年6月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『ひつじの鍵』で様子見しすぎたからか、相手の気持ちを慮りすぎたからか、恋のライバル以外に知られる事なく、煮え切らないまま終わってしまった和楽のお話です。
絵画以外の事には執着せず無為な日常を過ごしていたかに見えた和楽が、とある作品と製作者本人とに運命的な出逢いをする所から人が変わったように生き生きしだしたように感じました。
和楽のように「精神的によく効くブレーキを持っている人」は自身を抑制することに長けていて、本来は大人で好まれるはずなのに、それが恋愛ごとになると本人にも周りにも良い方向に働かなくて厄介ですよね。
私としては、スピン元で少々不憫だった彼が幸せになれたのは嬉しいけれど、『ひつじの鍵』の羊のキャラの方が好みでした。羊の「ラッキー=悩みがなくてハッピーってわけじゃない。世の中それを分かってないバカが多すぎる」というセリフが心に残りました。「それを分かってないバカ」に入る自覚がある私は、ハッとさせられました。サラッとした一文でも読み手に多大な影響を与えることのできる素晴らしい作家さん・作品だと思います。
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