このレビューはネタバレを含みます▼
「MO DS」のスピンオフ、Rainのオーナー春と時雨の腹違いの弟である雪鷹とのお話。
MO DSでは兄貴分であった春の切ない物語が胸に響きます。不眠症に陥る程の過去の傷と、時雨を愛した記憶、そして時雨にそっくりな雪鷹との出会いなど春を揺さぶる様子が一つ一つ丁寧に描かれています。
春の生き方も波瀾万丈ですが、MO DSの世界は時雨を中心に、その周りの人々の苦悩や幸せになるために藻掻き苦しむ様がリアルです。時雨が裏社会の人間らしくない優しさと人情を持っていたがゆえに、周りの人が愛と人間らしく生きることを期待してしまった。そしてそれは裏社会で生きる人にとっては都合が悪かったからこそ、全て上手くいかなかった。そんなやるせなさを全て背負ってしまった時雨と、時雨を慕ったがゆえに傷ついた春と雪鷹の想いが重なり、打ち解けていく過程がまた愛であり救いであったと思います。
カタギになった春と若頭になった雪鷹。この二人の物語はまだこれからだし、もっと幸せになる姿を見たいです。また、MO DSの世界の中心である時雨の人生を、時雨視点で見てみたい。彼がどんな境遇で、何を思い、最期の時を迎えたのか。MO DSの世界にもっとどっぷりとハマってしまいたい欲求が収まりません。ぜひ、番外編でいいので、時雨のお話が読みたいと思いました。