錆のゆめ 右
」のレビュー

錆のゆめ 右

久間よよよ

優しく穏やかなほど浮き上がる残酷な事実

ネタバレ
2023年6月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『錆のゆめ』上下に続くお話。同時発売の『錆のゆめ 左』と同じ時間が違う視点で描かれます。妹と二人施設に暮らす無垢な少年としおさんは、妹の養親を斡旋してもらう代わりにセクサロイドにされてしまいます。人としての記憶を消され、性具として扱われるとしおさんと研究員の進藤との出逢いから進藤がとしおさんを引き取るところまでが『錆のゆめ』上下でした。一緒に暮らし始めた二人の時間の表裏を成すのがこの『右』と『左』で、両方読み合わせて初めて全体が見えてくる作りになっています。『左』はとしおさんの心情が主体で1話ごとにとしおさんの絵日記で締め括られます。その世界は進藤と暮らす外の世界のキラキラとワクワクに満ちています。お誕生日、クリスマス、お正月、お引越し、幼く無垢なとしおさんの世界はシンプルで進藤への真っ直ぐな愛と信頼に満ちています。それだけに、としおさんがセクサロイドにされてしまったことに反発する進藤がとしおさんを抱くことは絶対に無いだろう事実が切ないです。二人の生活が平和で穏やかなほど、としおさんが背負わされた人間の業がくっきりと浮かび上がってきます。セクサロイドとしての機能が錆びついてかさりと剥がれ落ちたところに生まれた夢のような関係なのかもしれません。
いいねしたユーザ4人
レビューをシェアしよう!