穢れのない人
」のレビュー

穢れのない人

虫飼夏子

赦すことができない苦しみが少し和らいだ

ネタバレ
2023年6月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 冤罪の物語の主人公の名が「秋」で始まるので、実際に昭和にあった一家惨殺事件の一部冤罪を主張している犯人に被り、1話から物凄く興味を惹かれた作品です。
内容は実際の事件とは大きく違いましたが、毎話毎話引きが強く続きが気になって待ち遠しくて仕方ありませんでした。
最終話を読み終えた今、物語の決着に安堵しつつ、1話毎に多くを考えさせられたな〜と感慨深いです。
とても面白い!…と同時に、深く自分の内面を掘り下げてしまう内容でした。
***
全ての人は穢れた行為によってこの世に生まれたので、実は穢れのない人は存在しないのではないのか?その上で原罪を抱えて生きることに意味があるのではないのか?
初めは、木場にとってだけ秋鷹が穢れのない人だった、と考えていたのですが、ラストまで読んで、全ての人に贖罪をして穢れを祓い終える機会が用意されているのでは?と考えたくなりました。
赦せないことや赦せない人を抱えたまま人生を終えるのはすごく嫌です。自力で赦すチカラが出ないのは本当に怖しいです。けれど今後自分にも赦す機会が訪れるかもしれない、その時に赦すチカラが湧き出るかもしれない。そう思えたことがありがたかったです。
***
罪を犯した登場人物たちは自分の欲望に素直に行動しているので、決して同意はできませんがある意味理解はできると思います。
しかし木場の母親だけはずんごく気持ち悪くて絶対知り合いになりたくない!と思いました。本当に気色悪い…。とことん自分だけが大事なのね。
***
修正は見えない構図、一部白ボカシでした。
いいねしたユーザ23人
レビューをシェアしよう!