千年万年りんごの子
」のレビュー

千年万年りんごの子

田中相

深い。。

ネタバレ
2023年7月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 全3巻ですが相当深くて物語がしっかりどっしり。人身御供で嫁を神様に奪られることになった他所者の婿が懸命に立ち向かう話ですが、そんな一言ではとても語り尽くせない奥深さ。まず対峙するのが因習を固持する村人達…というわけではなく、見えもしない神様そのものというのがとても面白く恐ろしく壮大。村人達はむしろ自らの手でその儀式を断絶していたというのも面白い。それでも「りんごの子」として育った村人たちにたゆたう土地神への信仰、畏怖、諦念。懸命に生きているだけの人々からなぜ奪うのか、それは祟りとどう違うのかという雪之丞の怒り。様々な感情が複雑に丁寧に織り込まれていてとても重厚でした。全てを静かに悟り明るく気丈にしていた朝日が一言だけ、こわい、と小さく呟いたシーンはもう…ウワーーーッッ!!とその静寂に引き込まれて仕方ありませんでした。アスファルトと人工物に囲まれ生きる都会の現代的生活では感じることの出来ない、”不思議はあるよどうしたって” を存分に感じる作品でした。切なくて重い、苦しい。でも必読。
おぼすな様が、嫁さ寄越さねんなら子供貰ってくぞと言わんばかりに子供を狙うのが姑息で腹立つー。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!