このレビューはネタバレを含みます▼
2月の雪の日、青海満の目の前で一緒に登校していた山田浩一がトラックにはねられます。頭部は陥没し、首も脚もあちこち捻じ曲がった浩一は、でもぱっちりと目を開けて何でもないかのようにセルフで整体していつものように満と登校します。浩一には脈も無く身体も冷たく明らかに非現実なのに、満はその事実を隠そうと必死に画策します。真面目な委員長、浩一のことが好きな派手めな橋本さん、その親友で神社の娘の鏡屋さん達クラスメイトや、満の父親が院長を勤める病院の女医らを巻き込んで、生きている死体•浩一は存在し続けます。ストーリーは最初のうちは二人の関係には触れずコミカルに進行してゆき、やがて二人の境遇から出逢い、今までの関係がわかってきます。八重桜の散り敷く図書館脇の小道で浩一が満に友達になって欲しいと言った高1の春、浩一のお弁当のカニさんウィンナー、日々積み重ねられる登下校や休み時間、放課後、そして高2の夏の雨降るキャンプ…ピュアッピュアなDKの恋と青春が互いに互いしか存在しない奇跡だったこと、そしてその奇跡が最後の奇跡を生んだことがわかります。寂しい境遇で育った満を温かく包み込む浩一の最後に明かされる孤独が切ないです。ラストはコロナ禍の今に繋がるお話は、実は身近な死について、忘れることの苦しさと救い、心の移り変わりと変わらぬ想い、色んなテーマを投げかけてくれます。