神様ゆるして
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神様ゆるして

比古地朔弥

砂丘の蟻地獄かぬかるみか、

2023年7月26日
足を取られてもがいても抜け出せない。金銭的ではなく人間の貧困と言ってしまえばそれまでではありますが、困窮と閉塞と愛着と性欲がからまってできたほどけないつばめの巣のような。線画の丸さに高橋葉介先生の影響を感じますね。『まひるの海』の作画と芸風で何となく察してはいたけれど、ひたすら女性が道具なんだよなあ。兄貴も兄貴で大変だったのはわかるけど、全ては兄の中だけで収束しており、辛めに言えば文学的自罰オ.ナ.ニーショーだった。玉魚はずっと愛玩道具の人形として終始しており、兄貴自身が真に自立した時、初めて『玉魚』という一人の“人間”が見えてくる。あくまで男性視点のお話でした。風イ谷嬢となった玉魚に『男好きのする』という表現があったけれど、中卒でトロくさくて喫茶店のウェイトレスも出来ないような玉魚にまともな仕事に就けるのか。職業に貴賤はないと言えど、よりによって、お前(兄貴)がそれを言うのか、とあまりの無責任さに呆れた。兄貴のすべき事は、受験の逃避のついでに妹とセッ久する事ではなく、受験勉強をしながら父親を監視し玉魚を守る事だったはず。それを自分の意思でなげだしておいて、他責が過ぎると思うけど、そういうふうに思わないと生きていけないくらいメンタルの弱い生き物なんでしょう。兄貴が許しを乞うべき相手は、神様ではなく妹に対してなのでは? それはそれとして、表現力としては大変高く評価しています。
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