ちーちゃんはちょっと足りない
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ちーちゃんはちょっと足りない

阿部共実

ナツという人間

ネタバレ
2023年7月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ YouTubeの鬱漫画紹介の動画で紹介されてたので読んでみた。人は死なないし、精神病にもならないし、不思議な現象も起きない、この日本のどこかにある「日常」をそのまま書いたような作品。タイトルは「ちーちゃんはちょっと足りない」となっておるが、実質的な主人公はナツというちーちゃんの友達だった。このナツの人物像の描き方が素晴らしい、というかまんま中学生時代の自分を見てる気分だった。スクールカーストは下位、ただしいわゆるオタクとかでは無く少ない友達とグループを形成して固まってる。旭ほど良くは無いし、ちーちゃんほど悪くはない、平均よりワンランク下くらいの学力。給食費が払えなかったり文房具が買えないほどの貧困では無い、けど家は団地の1階だし、好きな物は買えない、シングルマザーの家庭。旭みたいに気は強くないし、ちーちゃんみたいに無邪気な感じでもない、だから陽キャとは仲良くなれないし、嫌いだから陰で悪口を言う。呆然と死にたいなんて思うこともあるが結局実行に移す勇気は無い。そんでもって、そんな自分に対して強いコンプレックスがある。そんなナツという1人の女の子が何も成長しないというお話。ちーちゃんはお姉ちゃんや友達に支えられながら着実に、一歩一歩成長していく。一方ナツは成長しない。なぜかって、ナツにはちーちゃんという"下"の友達がいるから。終盤の描写から、ナツはちーちゃんにとても依存している事が分かるが、それは単純な友情によるものではない。ちーちゃんはナツにとって唯一、コンプレックスを感じずに接する事ができる友人だから。旭は自分の嫌いな陽キャと仲良くしだした。だから自分の妄想だけで勝手に旭が陽キャになりたかったと決めつけて絶交した。ただし、成長していくちーちゃんにナツがコンプレックスを感じ始めるのもそう遠くはない、なんならもう感じているか…。
なんというか、日常系アニメには必ず頭悪いキャラっていると思うんだが、もしそのキャラよりもっと頭悪いのがレギュラーとして出てきたら元からいた方はどうなるのだろうか…?それが「ナツ」であると思った。頭は悪いけど、ちーちゃんがいるから自分は頭悪いキャラにはなってない、故に誰からも注目されない。じゃあナツは一体何者なのだろうか、どんな価値があるのだろうか。
ナツはホントに人間味溢れるキャラ。自分の拙い文章力ではこれ以上魅力を伝えられないので、是非読んで見てほしい。
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