このレビューはネタバレを含みます▼
●ずいぶん前に一度拝読して、ちょっと胸がザワザワする感覚があって、なかなか再読できずにいた本作。久し振りに開きましたが、とても良かった。ザワザワも含めて。私のザワザワは楽の特質(おそらくギフテッドまたは発達障害のような)に対してでしたが、それがあってこその楽だし、そんな楽だから宗一の心をとかしてくれるんだなぁ…ありがとう…と思えるほどでした。
●序盤では、宗一は楽のことをペットのように話すし、楽はまさにわんこのように宗一に懐いて好き好き言ってる。身体の関係はあるようだ…どういう二人??と読み進めるのですが。そこから宗一と楽、両方の視点で、過去も含めて丁寧に描かれ、どちらにも感情移入できました。
●家族に愛してもらえなかった宗一は、人と深く関わらないように壁を張る。楽との触れ合いは心地良いが、感情は動かさないし、踏み込もうともしない。そのくせ一丁前に独占欲はある。楽に対する自分の感情から目を背け、これが「好き」なのだと観念するのはずいぶん後のこと。
●一方の楽は、「普通じゃない」と周囲に言われ続け、母親もろとも父親に捨てられ、それでも母と母方の祖父母に愛されて育った。でも、自分が「普通じゃない」ことがとても怖い。そのせいで身近な人が不幸になると思ってるから。そして、仕事もできず宗一の家に転がり込んで、好きだと押し付けてる自分は普通じゃなくて、だから宗一を苛立たせてるのだと考えて出て行ってしまいます。
●二人がそれぞれ自らを(生い立ちを含めて)見つめ直して、「やっぱり楽と/宗ちゃんと一緒にいたい」って思える。自分から楽に会いに行って恐るおそる気持ちを伝える宗一、宗一に会って絵を描くことに立ち戻ろうと決める楽、どちらの行動も素敵。「“ケッコン”の先、家族になろう」っていう約束が素敵。
●描き下ろしは、ぽっかり抜けていた再会の一夜。これは確かに賛否あるかも。楽は良くも悪くも自分に素直で、欲しいと思ったらとことん欲しいんだろうな(それは特質によるものもあるのかもしれない)。でもその強引なまでの素直さがあるから、宗一は楽に(良い意味で)絆されるんだろうなと。二人が出会えて良かったなって心から思います。
●(追記)『Canna 10th Anniversary』に収録の6Pの番外編でその後の二人の様子が見られます。本編でもこちらの番外編でも、宗一の同僚がめっちゃいい奴です!