逢縁カタルシス
」のレビュー

逢縁カタルシス

大島かもめ

寡黙な運転手と訳あり主人の大正ロマンBL

ネタバレ
2023年8月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大正12年(1923年)関東大震災の1ヶ月後の大阪から始まる物語。震災で仕事を失い東京からやって来た近藤正太が、薬種商の伊波屋に運転手として雇われます。伊波屋の主人はまだ若い伊波竜次で、かなり天然な近藤の失敗も大らかに見守ってくれます。真面目な近藤は、朗らかに周囲を笑顔にするようにとの伊波の言いつけを愚直に遂行すべく古新聞に落語のネタを一生懸命に書き付けます。そんな近藤を笑いながら、伊波は新しいノートと鉛筆を買い与えるのでした。近藤はノートに日記を書くようになり、伊波は近藤の白分への気持ちをそのノートから知るのでした。恋心を隠そうとしない近藤に伊波は動揺し、時を同じくして伊波の婚約者と駆け落ちした元番頭の消息が流れてきます。身寄りの無い伊波は丁稚として伊波屋に奉公し、一人娘に婿入りすることになっていたのでした。伊波の抑圧された苦しみを近藤は見抜き、浄化するべく行動を起こします。中之島近辺の大大阪時代の建築や有馬温泉、カフェーや白金カイロなど背景や小物の使い方が効果的で、古き良き時代の主従の恋をしっとりと演出します。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!