犬も喰わない
」のレビュー

犬も喰わない

彩景でりこ

切ない

ネタバレ
2023年8月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ でりこ先生、凄いなぁ。読了後、泣けてきた。ままならないとは、こういうことかな。
確かに、犬も喰わない。
大きく分けて2種のお話が入っています。
1-5でナンバリングされている表題作。屈折した愛情を何十年も持ち続けている、山代、奥園の2人に若い空木を取り巻く愛憎劇。追われる男、追う男、追う男を追う男。空木の存在が山代と奥園の追いかけっ子に終わりをもたらした。ほんと、巻き込まれた女性たちはたまったもんじゃないのに、奥園によって新たな道を得て、山代によって生活には困らなく終わらせている。外側の世界と内側の世界。2人の理解者としての空木であり、奥園を救った空木。
もうひとつが、写真、告白、骨の三部作でひとつの話。乙彦と正毅、大悟、親友同士の長年の伝えきれなかった思い。正毅が突き破ればよかったのか、乙彦が素直になればよかったのか。骨を抱く正毅の嗚咽が切ない。
人生、そんなに長くない。いつ、何があるかわからない。思い残すことがないように生きるのは簡単ではない。もの凄く考えさせられる作品でした。
これ、20代や30代の人が読んだら、違う感想を持つんだろうなぁ。50代には身につまされる話でした。切ないけれど、素敵な作品です。
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