きみを死なせないための物語
」のレビュー

きみを死なせないための物語

吟鳥子

こういうSF好きです

ネタバレ
2023年8月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ なぜか最終巻(番外編)を読んでいなかったのですが、久しぶりに一気読みして番外編も購入、ここまで読んだ方が絶対良かった。大満足です。弟のパートナーとの関係が、本編を読んでいる時しっくりこなくてどういうこと?と思っていたのですが、そんなことが起きていたとは。過去編も未来の話も、本編の味わいが一層深まり、もう一周したいなと思っています。
SFとして世界観(まさに世界の見方)が面白く、人間、人間が生きることについてとても考えさせられる一方、何考えてるかよく分からないけどとにかく頭が良いしクールでかっこいい、という感じだったアラタがどんどん人間くさくなっていく姿もグッとくる、アラタの成長物語でもある。ほかのキャラクターも、読んでるうちに好きになったり嫌いになったり、皆が壁にぶち当たりながら成長していく様にも、生きることについて考えさせられました。特に中盤のシーザーの格好悪さは、一番身につまされるというか(烏滸がましいですが)。ルイの言葉がキツくって、自分も頭をガツンと殴られた心地でした。そこからあそこまで変わっていったシーザーはめちゃめちゃ格好良いし、なんだかんだでああいうラストを迎えられて本当に良かったなと思います。シーザーが船に乗らないとなるとアラタにはかなりキツイだろうな、と心の底から思うような二人の関係もすごく良かったです。もちろん、ターラへの愛に泣いちゃうアラタも。
ボロボロに泣いて疲れるというのだけが難点ですが、切なくて希望があってどうしようもない愛(狭義にも広義にも)に溢れてる、大好きなSF作品です。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!