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今月(4月1日~4月30日)

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シーモア島
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  • 百草の裏庭

    青井秋

    植物へのスタンスが色濃く表れた短編集
    ネタバレ
    2026年1月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 『緑色の風に君をひらく』を読んでとても気に入って少しずつ作者さん買いしてます。
    黒っぽく描かれている草木には癒しや安らぎだけでなく厳かさも感じます。でも作品全体に感じ感じられるのは優しさで。自然から必要なものをを必要なだけ受け取る穏やかで丁寧な暮らし、温かな交流。ちょっと憧れます。
    表題作と短編それぞれをうっすら関連させるように進んでいく並び順もよいし、どのお話もとてもよかったのですが、特に気になった2つだけ書いておこうと思います。

    「stalks」
    植物って動物のように動くことはできないけれど、生存戦略がなかなかにしたたかだな、と思うことがありますが、これは美しい!「canna」からこんな風にお話が広がるとは!生物の営みとその歴史と本能とにあれこれ思いを馳せてしまいます。

    「浸食」
    恋人が未知の菌糸に侵されて、首筋からきのこを覗かせて帰ってくる。体調に問題はなさそうにしているが…?「人は何をもって自分を自分と認識し、照明できるのか」、興味深い問いだと思います。
    最初は共生するタイプの菌糸かと思いましたが読み進めていくと冬虫夏草あたりのイメージの方が近そうです。ふと、菌に寄生されて性別に関係なく求愛行動するセミを思い出したのですが、その菌の方向で考えてみるとこのお話、恋人同士であるところが面白いと思います。
    愛していると言ったのはなぜなのか?彼の言動は菌がそうさせているのか、自分がもう長くないと悟ってなのか、今まで知らなかった別の一面なのか。
    リアルに考えると怖いけれど、こちらも作者さんらしい美しい終わり方でした。
  • 續・ポルノグラファー プレイバック

    丸木戸マキ

    『アケミちゃん』→本作再読で感動しました
    ネタバレ
    2025年12月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ おすすめの順でこのシリーズを最終作『プレイバック』まで結構前に読んでいたけれど、『アケミちゃん』もあわせて読んだら、想像をはるかに超えてよかった。かなりリンクしているので、両方とも読んだ方がどちらの作品も断然味わい深くなると思いました。

    本作の後に『アケミちゃん』を読むと春子と静雄のその後と宝くじの真相が分かる仕掛けも面白いけれど、『アケミちゃん』からまた本作を読み返したら違ったものが見えてきて、完結した過去作品にこんな形でつなげられるのかとめちゃくちゃ感動してしまいました。

    シリーズ前作、前々作以上に『アケミちゃん』で見たようなシーンも多く出てきて、同じような状況でもこの人だとこうなるんだな、といったおかしみもありつつ進んでいきます。春彦をおっかけなさいよ、一緒についていけばよかったんじゃない、といった木島と春子・静雄のやりとりや、春子、木島、静雄と三者三様な電車のエピソードも両作品時系列も考えるとしみじみきます。最後のほうで春子が「どこにも行けない」と言うシーンがありますが、ここで木島が返した言葉が『アケミちゃん』のラストで春子、ひいては静雄の背中を押してくれたのでは…さらりとそう思わせてくれるところがとってもよかった。

    改めて「プレイバック」とは?と検索してみると、音楽制作などで録音したものをよりよくするための調整、修正時に都度行う確認のための再生の作業というものがあるようです。
    ある一言が誰かを変えたり、巡り巡って自分を救ってくれたり、また同じような状況になってもそれぞれ準備ができた時に今までとは違ったところへ行けたり…そんなこんながプレイバック的で、そうして両作品でみんな新しい選択をして前に踏み出していくところに静かに心に湧き上がってくるものがありました。
  • ワンダンス

    珈琲

    音楽に深く入り込んでいくようなダンス
    ネタバレ
    2025年12月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ストリートダンスの漫画というのは初めて読みましたが、音楽に合わせて踊るというよりもずっと音楽に近くて、身体で音楽そのものを表現するという感覚が新鮮でした。

    こちらの作品、ヒップホップやハウスに限らず音楽好きの人は好きなんじゃないでしょうか。音楽をどう捉えてどう表現するのかというということで、歌や楽器とダンスとで驚くほど共通するものがあると思いました。ダンサーだとどう表現するのか、ダンサーの語彙と感覚でその思考や技術を見せてくれるところがとても面白いです。

    最初はちょっと分かりづらく感じた絵も、スピード感やうねり、音のイメージ、どう動きで表現したいのかがよく伝わってきます。ダンス中に入ってくるスネアやベースのコマも臨場感があって効いてます。

    カボ君の吃音もうちに秘めた思いもバスケの経験も、持っているもの全てを個性に変えてダンスに昇華されるところに青春らしい魅力を感じます。
    湾田さんのダンスが好きな理由が「自由になれる気がする」というのがほんとにいいです。ダンスとは何かということや、心を揺り動かす根源に迫っていくような姿勢も好きです。言葉でないところで表現する、伝える、分かりあえる、高めあえるよさが存分に伝わってくる作品だと思います。
  • トロイメライ【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

    涼子

    トロイメライの曲の空気をまとった作品
    ネタバレ
    2025年6月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ トロイメライ…夢、夢想ということで、作品全体が曲のタイトル通り夢の雰囲気をまといつつ、ピアノの静謐な響きのような透明感と静けさが感じられ、余韻が後を引きます。

    トロイメライは大人が子供のころを回想するために作られた曲ということですが、作中にも子供のころの回想シーンが出てきます。あたたかく懐かしい思い出だったり、あの時本当は寂しかったんだと気づいたり…この作品を読んでトロイメライの曲を聴くと少しずつ形を変えていくメロディーが、感情の入り混じった音の広がりが、ストーリーと相まって味わい深いです。

    作中でのこの曲の使われ方も素敵です。子供の頃眠れぬ夜に母親が弾いてくれた思い出、勇の高杉先生への向き合い方が変わった時、そして終盤のこの曲をきっかけに、という展開はまさしく夢のようです。

    勇側から見るとピアノから遠ざかっていたけれど、好きな人にできることをしてあげたいという思いからピアノへの情熱を取り戻すお話になっていて音楽ものとしても期待を裏切らないです。

    高杉先生のほうは、今の性格が子供の頃から長い年月をかけて形成された分、ゆっくり時間をかけて、押し込めていた思いに気づいて、認めて、手放し、新しい一歩を踏み出していく様子が丁寧に描かれているのがよいです。

    トロイメライ、夢ということころからシューマンとフロイトも入ってると思います。
    高杉先生が精神的に病んでいるのは、シューマンが精神を病んでライン川に投身自◯未遂したのを連想させますし、勇がピアノが弾けて高杉先生とかなりの年の差なのはシューマンの妻クララでは。

    白昼夢?と性的なものを結び付けているのがフロイトだと思います。BLって片親やダメ親が多いなと思ってましたが、フロイトには同性愛についての言及もあるのですね。カウンセラーと患者間の「転移」も少し出てきますが、最終的にそれも共依存も超えて恋愛してるのがよいです。

    上記の様々な要素がうまく絡み合い1つのストーリになっているところが本当にすごいです。

    『肩甲骨〜』は読まなくても大丈夫ですが、そちらも読むと同じセリフが別の形で出てくるし、「共犯者」が理解しやすいし、トロイメライ、シューマン、フロイトを感じるところもあります。私は『肩甲骨〜』を後に読みましたがその方が楽しめると思いました。
  • 夢で逢えたら覚悟して

    ドンドン

    心理学を取り入れた夢魔のお話
    ネタバレ
    2025年1月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしている方のレビューを読んでずっと気になっていた作品です。サクッと読めるのに読み応えがあってとても面白かったです。

    夢魔、夢のお話ということで、フロイトなんですね。作中にも夢分析という言葉が出てきます。抑圧された性的な欲望が夢の中に現れる、ということで、夢魔という題材にぴったりですね。

    フロイトは、何かと性的なものに結びつけるところが嫌厭されがちという面があると思いますが、そこをBLとして笑いに変えているところがすごいと思いました。その笑いが、恋愛しているからそうなっちゃうよね、と共感できるのも、とても良いと思いました。

    そして夢の中の絵が、フロイトと関連の深いシュルレアリスムを連想させます。これがゆる〜い感じで笑ってしまうんですが、なぜゆるいのかしっかり理由もあって…作者さんのセンスに舌を巻きました。
    絵画だと動きませんが、漫画だと動きがあるところもまた面白いです。巨大なたんぽぽや個性あふれる奇妙な生き物たちがなぜそんな姿で出てくるのか想像するのも楽しかったです。

    黒曜の夢の話だけではなく、望のほうも黒曜(石)の助けでトラウマの克服という話も出てきますが、全体としては明るく、かわいく、楽しく読めてよかったです。
  • さよなら、ナナシのバイオリン

    うめーち

    ファンタジーだから描けた楽器と奏者の関係
    ネタバレ
    2024年12月12日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 作品紹介で楽器に名前を付けると命が宿るとあって、弦楽器で自分の楽器に名前を付けていた人がいたな!と思い出しました。

    この作品は楽器のお話ですが、作者さんの実感に基づいたファンタジーなのだと思います。だからこそ誰にでも感覚的に分かって説得力があり、さらに楽器経験者ならあれこれ想像を膨らませるのが楽しい作品になっているのではないかと思います。

    「ギターはボディ、ネック、ヘッドがあって、女の体と一緒だぜ!」みたいなものを昔、音楽雑誌で見たことがありまして、バイオリンはペグのある部分をヘッドとは言わないようですが、ボディ、ネックがあって形が似ているので、そんなところから着想を得たのかなと想像しました。これを名づけが特別な意味を持つ、ということと組み合わせて、楽器から実際に人へと変身してBLな関係になる、というアイディアがすごいと思いました。

    皆さんおっしゃるように絵の表現が見事だと思います。
    同じバイオリンでも個体差があることや、奏者によっても音に違いがあることを絵で見ることができます。演奏の表現は風景描写的なものに加えてGaが他の楽器と踊ったり、一緒に泳いだり、犬(ビオラ)の上に乗って走っていたりします。奏者がどんな感覚で音を合わせているのかがわかるし、擬人化だからできる表現だと思います。

    初めて人に所有されてまっさらピュアなGaと、様々な人に所有されてきたピアノのコスモの違いも興味深かったです。設定を生かしたストーリーも素晴らしいです。

    絵もそうですが、もったんの名前の襲名のようなところもまたジョ〇ョっぽいと思いました。もったんの本名は、こんなお菓子があったような…と検索したら似た名前が出てきますね。そのキャラクターの顔が!そうか最初からそうだったのか~となりました。よく見たらもったんの後頭部も面白いことになってました。

    私は木管楽器経験者ですが、相棒となる楽器をこんな風に描いた作品に出会えて本当にうれしかったです。
  • 新宿69へヴン【単行本版】

    ウノハナ

    清々しく充実した読後感
    ネタバレ
    2024年7月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 歌舞伎町が舞台ということで結構及び腰で読み始めましたが、清々しく充実した読後感で大好きな作品になりました。
    こちらの作品はヒロムの帰る場所がない、居場所(ホーム)がないという思いが、物理的な家を通して描かれていて、ヒロム(と沢木)の心と相関関係があるような感じになっている、という風に読みました。
    借金で家がなかったヒロムが、ルームシェア企画で温かいホームの疑似体験をして、その後住んだ帰って寝るだけの部屋や、昔こんなところに住んでやると思っていた沢木のタワマンを経て最後にボロでも慶太とずっと一緒にいられる温かいホームにたどり着きます。
    同じ構図でセリフが正反対になっていたり、慶太とヒロムが逆になっていたりして、最初は慶太がヒロムに沼落ちだったのに、次第にヒロムが自分に嘘がつけなくなるほど慶太に惹かれていく様子が巧みに表現されていると思いました。セリフも含みが感じられたり、事件が絵で暗示されていたりして、ウノハナさんの作品を読んだ限りでは、もっと直接的というか、明快な表現をされる印象だったので意外な感じがしました。かなり凝っていると思いますが、この作品の雰囲気に合っていると思いました。
    そしてみなさんおっしゃるように二人のキャラクターがとてもよいです。
    慶太のボーイと客の関係の中でしか生きられないと思っているヒロムを理解し、その関係の中でだけ愛を伝え、でもそこから出てきたいとという様子を見せた時はしっかり手を差し伸べるところや、ヒロムが身体一つで生きていることへの労りにグッときました。
    ヒロムのかわいさというのはボーイを始めてからの魅力だと思います。自分は全て失ってからっぽだと言いますが、人間的に成長して得たものもあって、そこで慶太と出会って新しい一歩を踏み出すところに繋がっている、そんな肯定感があるところがよいと思いました。自分の奥底にあった感情にも気づかなかったヒロムが幸せになって本当によかったのです。
    先に単話で読んでましたが、単行本はセリフがちらほら、絵もいくつか変更され、最終話に二人の新しい仕事のシーンが追加されてますね。単話と少し印象が変わりました。単行本は単行本で予想外にいろいろ楽しめました。
  • 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい

    豊田悠

    アニメから入りましたが原作はやはりよい
    2024年4月2日
    アニメがよかったので漫画の方も読んでみました。アニメのほうは、原作への敬意は感じられるものの、大胆に変更していて驚きました。

    漫画のほうはアニメにはなかったエピソードも多く、8巻の両親への挨拶と10巻の結婚式は胸がいっぱいになりました。

    登場人物が素直で真摯で、忘れかけていたものを思い出させてくれたように思いました。印象に残る言葉やシーンがたくさんあって何度も読み返したくなります。

    海辺や満月、満ちていく途中の13夜ぐらいの月?など詩的というか文学的というか、心情が重ねられたようなシーンもよいです。

    漫画の絵があまり好みでないという意見を見ましたが、個人的には微妙な心情の描き分けがよいと思いました。黒沢と関わることで、最初は少しもっさりしていた安達の顔が、少しずつ自信をつけていったり、藤崎さんの言うところの綺麗になっていったりする様子や、1巻から13巻までの中で1年〜2年くらい?経過しているようですが、主要人物がしっかり年を重ねている顔になっているところもリアルでよいと思います。