悪役の王女に転生したけど、隠しキャラが隠れてない。
早瀬黒絵/comet
このレビューはネタバレを含みます▼
最近、私の読んだ作品は、直接的な表現でダイレクトに言いたい事を書いているものばかりだったので、その場の空気や匂い、ヒロインが口にしたチョコの味や匂いまで脳内で再現できた(させられた)この作品には、久しぶりにググッと掴まれました。1巻の3分の2くらいまで、王妃を始めとする王族、メイドなどの使用人がヒロインに対して拷問とも言える行為を続けていくんです。目も当てられないような陰湿で凄惨な場面が延々と続きます。それだけなら、とてもじゃないけど読む気になれなかった…。でも、割と初めの方で優秀な暗殺者のルルが現れ、彼が、気まぐれにヒロインに興味を持ってかまい始めます。他の人間にバレない程度に手当てをし、食料を与え…、最初は、まるでボロボロの野良猫に対するように、でも、次第に懐いてくるヒロインに本人も分からない妙な執着心を持つようになり…。暗くて汚い物置部屋で、生まれてからずっと虐げられてきたヒロインと、殺すことに特化した凄腕暗殺者のルルの関係が、ぎこちなく、もどかしくも確実に育まれていく過程が丁寧に描かれていて、ハマりました。この先ずっと続いているようですが、今のこの余韻を壊さずにいってくれるのか?先を読みたいような、読みたくないような、ジレンマです。
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