少年と神隠し
」のレビュー

少年と神隠し

ゆき林檎

魂で惹かれ合う輪廻転生和風ファンタジー

ネタバレ
2023年8月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 自分を育ててくれた人が亡くなり村を出た少年を助けてくれた謎の青年との不思議な縁を描いたお話。
テンがとてもミステリアスで、最初は不穏な昔話感がありましたが、穏やかで優しいテンの空気が作品の雰囲気と相まってとても落ち着いた気分で読めます。修一郎との関係性は六道や輪廻転生の日本らしい考え方が取り入れられ、ファンタジーなのに現実味があると思いました。
テンは修一郎の前世である上人様に惹かれ、上人様の魂を辿って菩薩を弔い、修一郎に辿り着きます。輪廻転生から外れ天狗になったとしても、それを受け入れ静かに暮らす様は、上人様からの教えが心の底から染み付いているからであり、彼らの絆の証のようだと感じました。そして、修一郎がテンの夢をずっと見るのも、上人様の魂がテンを最期まで気遣っていた想いの証なのだと思います。テンが天狗になってしまった心の闇は辛く苦しいものだったと思いますが、二人が一緒にいる時の穏やかで幸せな時間がやっと二人に訪れて本当に良かったなと思いました。
これから二人で過ごす長い時間の中で、テンが修一朗のように新しい命へ転生出来る方法が見つかることを切に望みます。
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