弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版・描き下ろし特典付き】
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弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版・描き下ろし特典付き】

神寺千寿

あこれTL作品だったわ、と思ってしまった

ネタバレ
2023年9月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ マンガでも小説でも、どれだけインモラルだろうが犯罪だろうが、作者が「作品を面白くするために」敢えて描いたモノならば受け入れる。それが読み手としての最低ラインだと思っています。

こちらの作者様は問題作である204-light of room 204を先に読んで気になり(突然打ち切られていることも含めて)、他作品も読んでみてたどり着きました。

三角関係ですが、ベッタベタのいやらしさとかハーレムかよっ!の不快感がなく読みやすくあっという間に8巻読了、単話の54巻まで読んでしまいました。(こちらの先生、モノクロだとわかりにくい絵柄ですがカラーはとても見やすく一瞬で理解しやすいです。)

その中で心にストレートに強く響いたところが、7巻の37話にありました。
それは創作者の鬼気迫る描写です。
若き小説家は、最悪でドン底で悔いても悔やみ切れない状態なのに、降りて来てくれるのは綺麗なものばかり。あー、これは「作る人」にしか当てはまらないなあ。凡人には共感できなくて悔しいなあ。でも悔しいと思わせてもらえる素晴らしい描写だなぁ…と涙してしまいました。「降りて来る」じゃなくて「きてくれる」と言わせているところが更にニクいです。
この真実以上の真実味ある描写のせいで、それまでの7巻分の「虚」が実感されてしまいました。イヤこりゃ逆効果だろ?って思いましたが、この37話を読めただけでも私としちゃ大満足であります。ゆーてもここまで来れば最終巻まで読みますが。
………
作者さまの作風なのかもですが、問題となりうるインパクトを頭に描き、そうなってしまった理由を後から徐々に間接的に描かれているように思います。
昨今の一巻切りが多いご時世だとかなり不利ではないでしょうか。
今作の主人公(でいいのか?)の少女も、傍目に見るとウジウジと辻褄が合わず、いー加減にしろよ!と思わんでもないのですが、読み進めるに従って実は内面に自覚のないトラウマを抱えアンビバレントに生きてしまっていると解ります。57話まで読んでも自主的な解決は難しそうに見えます。このオチをどうつけるのか?を一番最後に持ってきて一番のクライマックスにしてほしい期待が高まっています。

あと、脇を含めてのキャラ設定の配分が明確でわかりやすいのに結構練られているのが良いです。長編を一気に読める理由がここにある気がします。
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