このレビューはネタバレを含みます▼
336ページ。
本の約半分が表題作、プラス読切4作入り。
読切の『七月七日に』が良かったです。第二次大戦中の日本の田舎、13歳の少女と血のつながらない母の話。母が大好きな主人公、どこか謎めいた母親。母の再婚話や主人公の淡い恋、田舎の夏の景色の昼の光と夜の闇とに重なって、美しく切ない話でした。母にとって、主人公との日々は自らに魔法をかけた甘美なものであると同時におそろしくつらいものでもあったのかなと思います。
視点が子供なので、細かいこととか色々わからないふんわりした状態なのも、合っていたと思います。
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・表題作 漫画家を目指す少女の、友情に恋に悲劇に全部盛りで上手くいく、少女漫画らしい少女漫画。
・『おりしもそのときチャイコフスキーが』大金持ちの遺児である少女が主人公。一目惚れしたと恋人を連れてきたことで動く、演劇仲間達の恋模様。幼い日の気持ちのすれ違いが寂しい。
・『いたい棘いたくない棘』主人公は少年、幼馴染のガキ大将との再会と密かな恋心……が主軸だと思うんですが、主人公の姉の方に気持ちが持っていかれました。そして、姉に荊の冠を被せたあの言葉がどんな事情でも私は許せないし、天使の姿でキレイっぽく現れた二階級特進ぶりが腹立つ。捻くれ者なので。
・『シンジラレネーション』高校生男子、飛び降りようとした少女を助けて始まる話。死ぬのを止めたのだからおもしろいことを教えろ、と言われて振り回される様子が良い。妹の話が入っているのが少しゴタつく印象。