はだける怪物
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はだける怪物

おげれつたなか

[好き] と[愛]の違いを考えさせられました

ネタバレ
2023年9月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 巨匠おげれつ先生の、こちらの全シリーズ通して読ませていただいて、こちらに感想書かせていただいてますが、[好き]にはいろいろあるんだな…と改めて考えさせられた作品でした。高校卒業と同時に就職して、未来にたくさんの夢を持っていた林田でしたが、社会生活の1歩目が酷く躓いてしまったね。ある程度大人になってれば、冷静に逃げることもできただろうに、その逃げ道すらも周りに閉ざされてしまって、恋人に暴力を振るうことでしか、自分を保てなくなってしまっていって…。と、確かに暴力は駄目なのは大前提だし、こちらの作品はそこを軸にストーリーが進んでいくんだけど、付き合ってた頃の弓も林田も、愛ではなく好き止まりだったのかな…と。作品通して好きはたくさん出てくるけど、愛してるは1度も出てこない。弓は林田が好きだったけど、心には真山がいた訳で、友達からの好きから脱してなかった。だから、自分のすべてを曝け出せなかったし、ほんとの自分を見られるのが嫌で、どんなに林田に暴力振るわれてもヘラヘラしてた。一方の林田も、強がるばかりで自分の弱いとこは曝け出せなかった。弓から欲しい言葉がもらえなくて壊れて、暴力という術でしか弓との関係を保てなくなってた。このどちらかに愛があれば、また違った展開になってたのかも…なんて、勝手に思う私。人は弱い生き物だから、誰かに縋ってたいしひとりでいるのは寂しい。この2人は富にそれが大きかったのかな。弓への贖罪から、笑わない、好きな人は作らない、一人で生きていくって思ってたけど、まっすぐに林田を受け止めて支えようとする秀那に、ちゃんと暴力でなく心で縋れるようになっていく林田を見て、いい人に巡り会えてよかったなぁ…と。2人の彼氏、両者とも受けへの愛が深い。相手の弱いとこも醜いとこも、まるっと受け入れて包んでしまう。愛してるとは言わずとも、それが伝わる。そこに救われてる。弓も林田も、愛されるのが似合ってるのかも。真山も秀那も抱擁力のある器の大きい大人彼氏だわ。弓と林田の話しが軸だけど、私はこの2人にエールを送りたい。みんな怪物と紙一重の毎日を送ってる世の中、なんとかして理性を保って怪物にならないように、日々頑張ってる。愛を与えて与えてもらえる、そんな世界であって欲しい。かな。ん?話しが逸れた?さすが巨匠おげれつ先生!今回もいろいろ考えさせられました。ありがとうございました。
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