いつまで代わりでシましょうか【単行本版】【電子限定特典付き】
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いつまで代わりでシましょうか【単行本版】【電子限定特典付き】

成瀬一草

良作!堅く真面目な受けをひらく自由な攻め

ネタバレ
2023年9月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 積読していたのを読みました。もっと早く読めば良かった。私はこの作品、素晴らしいと思いますし、すごく好みです。
あらすじとしては、主人公の圭(けい)は受けで、真面目なタイプ。長年親友に恋してきたけれど、その気持ちもセクシュアリティも隠してきた。その親友が結婚して、密かな恋情の区切りに直面している。結婚式の帰り、穂高(ほだか・攻め)と出会う。声が親友と似ていて、つい流され一夜の関係を持つ。けれども実は穂高は以前から圭を意識していた…。
お話の作りがしっかりとしていて、派手なストーリーではありませんが、いくつかの筋が並走して展開していきます。そこに読み物としての密度があって一冊でもとても満足感がありました。
関係性がすごく好きでした。受けの圭は、ふだんから自分を律して真面目、しかしその裏面として踏み出すことへの不安も持っている。対する穂高は、ひとところに根付くより、あちこち移動するタイプ。若い時に海外で入れたタトゥーがあって、圭はそれを自分にはない自由さの象徴と捉え、尊敬と憧れを感じる。穂高の方は、硬くて閉じた圭を見て、自分の手で開かせたいという欲望を感じる。お互いが引かれ合う様がとても自然で素敵でした。
もう少しでパートナーになれそうというところで、ある出来事が起きて、2人は離れ離れに。けれど、圭がここで「どうすべきか」という理性の部分を薙ぎ払って、「どうしたいか」にドライブされて穂高のいる福岡まで向かう。圭が勇気を出して変化し、それを穂高が迎え入れる終盤のこの場面は本当に最高でした。
何回も読み返す作品になりそうです。
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