このレビューはネタバレを含みます▼
錆びた夜→恋愛ルビ→はだける、と続くストーリー
トータルでのレビューをします。
弓の目線で進む「錆びた夜」だけを読んでいると、かんちゃんはとんでもねえDVクソクズ野郎だけど、「恋愛ルビ」「はだける」と進むにつれて、どうしようもなく苦しんで救いも出口もなかったかんちゃんのどこへもいけない気持ちを唯一ぶつけられたのが弓への暴力だったのかと思うと堪らない。
弓もかんちゃんもお互いがお互いに必要と思いながら、それぞれ「自分から手を離した」と思うほど相手に情はあって、その情が生まれるほどには時間を共にしたということで、それでもどうしても明るい未来に進めなかった2人が切なくてどうしようもないです。
弓に簡単に許されてはいけない、だから会わないし謝らないというかんちゃんと、真山への気持ちを奥底に持ったままかんちゃんを待つばかりで支えられなかった自分では秀那のようにはかんちゃんを笑顔にすることはできなかったと後悔するしかない弓。
互いに好きという気持ちがあって手を取って未来を語りながら笑いあった時間が確かにあって、なのに歪んで終わってしまった現実も、弓の見える傷もかんちゃんの見えない傷ももう絶対に消せないし、2人ともたぶん消したいと思ってない。相手を幸せにしてやれなかったという罪悪感を2人ともが別々に抱えて生きてく。
穏やかで優しい関係へ弓を引っ張った真山も、どんなに重く濁ったものを抱えてようとかんちゃんを支えると決めた秀那も、最後に秀那へかんちゃんとのアルバムを託した弓の気持ちも、そのアルバムに秀那との笑顔の写真を挟めたかんちゃんも、すべてがハピエンなのに泣きたくなるほどひたすら切ない読後感でした。