このレビューはネタバレを含みます▼
はだける怪物シリーズ第三弾。大阪に転勤になった秀那が弓と偶然出会い、それぞれの想いが交錯し、それぞれの愛に昇華されるお話。
「錆びた夜〜」から始まったかんちゃんの物語が苦しみながらもようやく幸せという結末に辿り着けて、まずは良かったと思いました。このシリーズでは、かんちゃんを取り巻く人の視点でかんちゃんとの関係を描いているのに、誰よりもかんちゃんの苦しみや辛さ、切なさが一番に伝わってくるのが特徴的だと思います。かんちゃんを好きになった人たちが見たかんちゃんが一番魅力的であり、深く想いあった時間があるからこそかんちゃんの行動に想いを馳せることが出来る。かんちゃんの想いの深さと根底にある優しさを上手く描いていて、直接的に想いを語るよりも深く記憶に残りました。
また、特装版小冊子「azami」を読むと、「錆びた〜」のかんちゃんの苦しみがより深く濃い闇となって感じられます。助けて欲しい時に、何も言わずにただ側にいられることの苦痛が悲しく切ないです。これを読むと、弓の気持ちが100%かんちゃんにないことや、かんちゃんとの生活に甘えている弓に対して少しモヤモヤが生まれます。だけど、「はだける〜」での弓を見ていると、弓なりにかんちゃんを好きだったこと、かんちゃんを
理解していたこと、かんちゃんとの時間が大切な思い出であることが良く伝わってきて、二人はちゃんと恋人同士だったんだなと思いました。
最終的に秀那を通して間接的に会話する形で、お互いの心情や現況を汲み取り、過去をきちんと思い出に昇華出来た弓とかんちゃん。言葉を交わさずとも相手の意図するところが分かるのは、愛の軌跡が為せる技だと感じました。そして、かんちゃんを一途に想い続け、ちゃんとぶつかってきてくれた秀那がいてくれて良かったなと心から思いました。これからはかんちゃんがたくさん笑って過ごせたらいいなと思います。