てぺとる!~てっぺんとったる!~
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てぺとる!~てっぺんとったる!~

凡乃ヌイス

いつの間にか夢追う2人を推していた

ネタバレ
2023年9月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ は〜、ホラーBLアンソロジーで、凡乃先生の「凡」は、「非凡」の「凡」だ、と思ったんだった、ということを読了後、思い出したくらい、ジワジワと満足度が上がってきて…、ホントに良かった!

「芸人BL!」ぐらいのザックリした情報を頼りに読み始めたもんだから、自ずと笑いに貪欲に読んじゃうわけなんだけど、黒髪イケメン後輩亮が、しょっぱな通天閣のコマの横でバラしょってるコマ、お笑い芸人を目指している先輩淳太のセリフに亮のモノローグが追いやられる描写、テンポの良い会話が面白く、読んでるうちに惹き込まれてしまいました。
そしたら、亮とオカンの関係、一流企業の内定を断ってでも淳太と歩むことを選んだ亮にとって、淳太が特別な存在になった背景、かいまみえる亮の淳太への執着が描かれ、これは、溺愛執着ものになるのか?…と思いきや、亮の人物像が、定型表現からスルリと逃げていくように、場面によって、二転三転するんですよ。同時に、一見アホの子のように見える淳太も、お笑いにかける情熱、亮を相方にしておきたい気持ち、どちらも真剣だから、この関係を相方以上のモノにして良いのか揺れたりしてて印象が変わっていく。2人の関係が対等なのも良き!「ボケとツッコミ」のポジションだけでなく、「受けなのかい、攻めなのかい?」の方のポジションについても、解釈しがいのある関係性の変化があって、いつの間にか「この2人の成長、見届けさせていただきますわ!!」と推しスイッチが入って2人のファン目線で読んでいました!

この作品、横軸の個性的なお笑い芸人達との絡みの面白さと2人の小ネタだけでも充分面白いのに、縦軸として、ラブだけじゃなく、人生の分岐点で安定を捨て夢を追った優等生亮の親からの自立、素人から人気芸人に登りつめていくための戦略と成長譚という大きな作品のテーマがあるのが作品の奥行きを深くし、満足度を上げているんだと思う。チビ絵も、真面目な亮のボケっぷりも可愛らしく、あんまりギラギラしたキャラが出てこないのも好み。特におもち、最後までいい仕事してたなあ。年齢聞いてビックリ!見た目カワイイのに〜!

合体シーンはないけど、それで良いと思えるテーマの充実ぶり。先生自身もこの作品連載中に画業に専念したそうで、作中の2人と重なり、夢にかける熱量が伝わるテーマ、お笑いネタ、キャラ作りと、どれも丁寧で愛おしい。興味が湧いたなら是非、の逸品
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