オメガバ風味の世界

住み込みのバイト先が閉店になり住む場所を探していたΩが、急なヒートを助けてくれたαの婚約者のフリをすることになり、そこから恋が始まるお話。
設定はオメガバースですが、激しい欲情や厳しい偏見などは少なく、オメガバの中では理性的な世界です。むしろ最初の設定も、貧乏学生がお金持ちの社長に助けられたという感じで、オメガバースである必要性はあまり感じなかったです。陽太と怜が惹かれ合ったのもαとΩだったからという描写はなく、偶然の出会いであり、お互いの利害と第二の性の対象が一致しただけで、単純に二人がお互いの良さに惹かれ好きになったという優しいお話でした。
この作者様は、お話の設定作りがとても上手で、キャラがお互いに惹かれ合うのもそのキャラ作りが丁寧だから納得できる展開が多いです。なので、オメガバースという世界観を借りなくても素敵なものが作れるし、むしろ現代風の設定の方が知識を活かした緻密な世界観が作れるような気がしました。
とはいえ、これはこれでとても面白いお話です。オメガバースが苦手な人も、手にとって楽しんで欲しい一冊です。