寄越す犬、めくる夜
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寄越す犬、めくる夜

のばらあいこ

至高のノワールBL(長文レビュー…)

ネタバレ
2023年11月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ よかった、めちゃくちゃよかった。
攻め一人に受け二人の構図に惹かれて読み始めたけどそれどころじゃなくストーリーが面白すぎる。ノワール映画大好きな私にはたまらない流ればかりで「おもしれ〜〜〜!!!!」って叫びながら読みました。

お人好しって度を越すとヤバいヤツと同じだと思ってるんですが新谷がまさにそれでしたね。須藤も菊池も新谷からすれば助けてあげたい対象で、首を必要以上に突っ込んでしまう。
須藤は母親の代わりでもいいからと言いながら「よしつぐくん」を求め、一方で自分を守って心配してくれる概念としての「よしつぐくん」をずっと探し続ける大人になれない子供のままだった。それは菊池も同じだったけれど、菊池の場合は新谷に愛された思い出で強くなれたし新谷に頼られることで子供から脱却できた。だから目の前で新谷が須藤を抱いたとしても、新谷が自分のことをかわいそうだと見下していたんだと突きつけられても「それでもいい」って言えたのかな。愛されたという実感は菊池の中で本物だったから。
だから新谷も妹のために菊池を信じて頼ったし「愛しい」と思ったんだと思います。
須藤のことは確かに「好き」なんだけど「愛しい」と思うのは菊池なんですよね。須藤を“普通の人”だと思って接してた時を思いながら「好きだから生きてほしい」と言ったわけですから……。
新谷はどっちつかずなわけじゃなくてちゃんと二人のことをそれぞれ大事に思ってたのは間違いないと思います。ただ須藤を抱くのは須藤にはそれが必要で、新谷はそれに応じる優しさがあったというだけで。
事態が丸く収まったあとも新谷はずっと菊池のことを見守ってたし、菊池も同じように新谷のことを大事に思い続けてた。3年間のプラトニックも最初の始まりや歪み切った関係性をリセットするために大事な期間だったんだと思います。時間を経て、新谷も菊池に向き合うことができたし、菊池も新谷を丸ごと受け入れる余裕ができた。お互いを信頼した二人が愛を確かめ合ったシーンは思わずじーんとしてしまうほどでした。

番外編まで読みましたが、須藤もどうにか生きていてくれててよかったです。トッキーもどこか足りない人だと思うので、理由とか理屈はなくていいからとりあえず毎日を生き抜くために二人でただ生きてるね、って確認し合いながら生きていてほしいですね。レビュー長!!
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