こぼれた余白【シーモア限定版】
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こぼれた余白【シーモア限定版】

のきようこ

自死を願う青年を拾う

ネタバレ
2023年11月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 夜中の3時に志津馬与一は、橋から飛び降りようとしている青年を引き留めます。「せっかく勇気を振り絞ったのに…」と嘆く青年を与一はとりあえず猫と二人暮らしの自宅に連れて帰ります。助けてもらった久慈紀道は、母子家庭なのに自分勝手に生きてきたことを反省し心機一転働き始めたところで母親を亡くして心が折れてしまったのでした。家を解約し貯金を使い果たしスマホも川に捨てて何も無いという久慈に与一は、リセットされたと思ってしばらくじぶんの家に住むよう勧めます。翌朝、与一は久慈に「それを返すまで死なないでね」と言って一万円貸してくれます。そのお金で髪をカットしてきた久慈はなかなかのイケメンで、バイの与一はちょっとドキッとするのでした。死にたいというより生きる意欲を無くしてしまった久慈が、家で仕事をする漫画家の与一と一緒に映画を観たりバイトを始めたり、生活の基盤を作り始めます。スマホと一緒に過去を全て捨ててしまった久慈は一人ぼっちで行くところも会う人も無く、久慈は自分が人の体温を欲していたことに気付くのでした。一つ屋根の下で相手を意識し始めた二人のモジモジした空気が漂い始めます。作中に映画『海街diary』が出てきますが、きっとあんなゆったりした時間がこれからの二人に訪れるのでしょう。
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