うつくしい体【単行本版(電子限定描き下ろし付)】
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うつくしい体【単行本版(電子限定描き下ろし付)】

鹿島こたる

密室でタトゥーを彫る作業の耽美

ネタバレ
2023年11月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 彫り師の小林夕路の元に著名な日本画家•花田の遣いだという美しい青年が訪れます。15年に渡って花田のインスピレーションの源だというミチルの身体に、花田は自分の代表作を彫って欲しいと依頼します。ミチルは花田に心酔しており、花田の作品そのものになることを自ら望み誇りに思っています。夕路は、若く美しい肢体に墨を入れる高揚感と共に、花田の創作の元であるミチルの魅力にのめり込んでゆきます。花田でなく自分を見て欲しいという気持ちから、次第にミチルの身体の内も外も思うままにしたいという欲望が突き上げてくるのでした。ミチルもまた、そんな夕路を気配で感じ、施術中の冷たい指先と熱い痛みに狂おしい熱と疼きを発します。夕路への恋に目覚めたミチルは初めて、命のない作品では無く人として生きる葛藤に苦しむのでした。芸術家に囲い込まれて過ごしてきたミチルは全てに免疫が無く、余りにも初々しく痛々しいのですが、それを乗り越えて結ばれた二人に思いがけない接点があったことがわかります。巻末の設定資料以外にもミレイのオフィーリアやクリムトの接吻を彷彿とさせるカットがあってタイトル通りの美しさでした。最後に出てくる映画はたぶん『君への誓い』かと思われます。
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