このレビューはネタバレを含みます▼
とてもとても優しい物語でした。
ずっと独りだった伊月と何百年も孤独だった狛。
お互いを唯一無二の存在だと実感していく過程を、静かに優しく表現されていてとても好感が持てました。
長い間の孤独から妖になりかけていた狛は、愛する伊月を傷つけたくなくて彼から離れようとします。
夜が明けたら、伊月の事も二人で過ごした優しい時間も何もかも全て忘れて妖に堕ちてしまうと怯えながら、元居たボロボロの社で伊月を想いながら過ごす狛。
そこへ猫から忠告されたにも関わらず必死に後を追った伊月が狛に愛を告げる場面で涙腺崩壊しました。
お互いの愛情を確かめ合い二人で生きていくと決めた伊月と狛だったけれど、人である伊月と狛犬の化身である狛とでは寿命というものが全く違って、最後の場面では伊月が写真の中に居たから、あぁ狛はまた一人になっちゃたんだって悲しくなりました。
でも狛の中に昔感じていた恨みにも似た強い孤独感は無く、伊月への深い愛情から感じるのは優しい痛み。
二人で過ごした日々を思いながら縁側で1人物思いに耽る狛は、昔のままの自分の姿にほっとします。
何故ならまた伊月に会った時気づいてもらえるから。
そして次の場面で「お前もひとりぼっち?」ってふわっと現れた伊月が狛を抱きしめるのです。
はぁもう感動‥
その後マグカップだけぽつんと残して縁側から狛の姿は消えています。
あちらの世界でまた二人が結ばれたんだろうなって想像できる終わり方でした。
絵は綺麗だし心が洗われる物語なので、皆さんにお勧めしたい作品のひとつになりました。