ジェラールとジャック
」のレビュー

ジェラールとジャック

よしながふみ

多くのBL漫画家さんに

ネタバレ
2023年11月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 影響を与えたという本作なので興味がありました。後に少女マンガとしても出版されている。少女マンガコミックスには「間奏曲」がひとつ追加されている。そっちは1冊になっているからな…そちらの方がお得だったかも(笑)

18世紀、フランス革命が起こる前後の時代。貴族というアイデンティティをもったクズがだいぶ出てきますが(笑)、それこそが文化の違いであり、思想の違いなのだろう。

妻や夫は愛すものではなく、様式美と義務で、愛人を何人も持つ。愛があったりなかったり。愛人の子を身籠ることも多かったのだろう。気位が高いため醜聞を恐れて隠しているだけ。日本同様にお稚児もあれば、男性との色恋やセック スはいまなんかより十分に周知されていた時代。

ロべスピエールの恐怖政治で淘汰されていく王族、貴族。このことがなければジェラールはジャックに愛していることを認めなかったかもなと思った。平民であるジェラールは愛を知っている。生きやすい愛も生きにくい愛も。逃亡の中、テルミドール反動によって命を救われた2人。生きていられる、という実感が妻の墓参りを促し、嘗ての愛に終止符を打つことができた。

ジャックを愛し、憎む心が浄化されなければ、ジェラールは本当に死んでいたかも。
大事に見守ってきた息子のようであり、恋人であり、パートナーであるジャック。
貴族の矜持をもつジャックが恋を自覚できてよかった。

余韻の残る良作です。
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