俺が好きなら跪け
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俺が好きなら跪け

里つばめ

里つばめワールド内だけで許してしまう色々

2023年11月19日
作品レビューではないのですが、本作を再読したら里先生作品についてしみじみ感じたことがあったので書くことにします。里先生のエリートリーマンものは、ガチガチのホモソーシャルの世界で、もちろんミソジニーもばりばりで、部分的にホモフォビアもついてくる現実と同様の地獄。要素だけ取ると拒みたいものばかり。なのに、先生がここに性愛を加えて描いたとき、性愛以外の部分の現実味ある描き方に支えられて、フィクション全体にもしかして現実に起きうるかもしれない、もう起きていることかもしれないという説得力が持たされ、そして、このファンタジーを通してみると、ついついレジストを忘れて現実を認め許してしまいそうにまでなる。そんな危うさをもつのが里先生の作品。そういう意味で、このジャンルにおける正統的な作品を作られる先生だな、と思わされます。そもそも男尊女卑が残る社会での生存を迫られる女性にとっては、このファンタジーを通して現実を見直すことこそが、ひとつのサバイバル手段でありきたってきたのだと思います。時代とともにいろいろ変わったこともあれど、この社会に生きる処方箋として里先生の作品はたまらなくよく効く。
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