金色の歌姫
」のレビュー

金色の歌姫

ブロンウィン・ウィリアムズ/藍まりと

何者なのか信じていいのか判らない人に恋

2023年11月24日
夕陽のシーンは色があった方が感じが出たとは思う。リジーの髪、「遠い思い出になったあとも」のシーンでの窓からの眺め、タナー屋敷のバックに映える山々に落ちる太陽、「世界中を金色に輝かせ」の見つめ合う二人、自然と近づきあう二人、気まずい二人、全部夕陽の色がドラマを演出していたと思う。後で亜麻色に変わるのなら尚更色を見たかったとは思う。あの日みた夕陽とのオーパーラップシーンなのであり、世界が金色に染まるのを感情的に何度も思い返していたに違いない、大切なコマが活きてくると思ってしまう。

シセロは世間知らず過ぎる甘ちゃんで、ハーレクインあるあるのとんでもない奴なのに、と思うと、キャムの阿漕さもまた後日のシーンではリカバリーなどしきれない相当な悪党だ、と思うと、そういうの一切がリジーの境遇をより惨めにして哀れみを誘う作り手の仕掛けに思えて、少しあざとい印象。

居たかった理由ーこれに尽きる。

手紙の中では「兄」と書いているが、後日もそこのところ行き違っている状態。原作を読んでいないので判らないが、原文は「彼」という記され方しかなかったのでは?

再会シーンの盛り上げ方、もっと貯めをきかせて欲しかった。シセロの出番、早い。

とにかく手紙の中の小さな言葉尻ではあるが、大切なことなので、それより以上に作中問題視するところはないのだが、私はこういうのは見逃せず、星を1つやむなくノッチダウン。

ただ、私はこういう、相手がどういう人かまだよく分からないうちに恋に落ちてしまう話が大好きなので(好きになった理屈付けのある話は余り信用しない)、本当に残念な手落ちを除けば、こういうのが一番楽しめるタイプのHQコミック。
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