透明な声で僕を呼んで
」のレビュー

透明な声で僕を呼んで

あさじまルイ

幸せを願わずにはいられない

ネタバレ
2023年11月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 間違いなく共依存。けれど、仄暗さが全然漂ってこない。とびっきり優しくて、癒される。あさじま先生の作品の中で一番好きです。
同じ傷を持つ、施設で育った塁人と柚希。6歳年上の塁人は、出会った子供の頃から柚希を可愛いがり、社会人になってからは高校生の柚希の保護者として同居してます。柚希は、子供の頃のトラウマにで失声症になり、塁人が首に包帯を巻いてから、話せるようになりました。首に包帯を巻いてる時だけ。それを塁人は『呪い』と密かに呼んで、塁人に贖罪したいと思ってます。でもそれは、たぶん、柚希にとっては呪いではなく、救いだったはず。だからこそ、柚希にとって塁人は唯一無二の存在です。二人一緒の生活は、一歩踏み出さなければ、穏やかで満ち足りてて。生活能力0の塁人と、家事をこなす柚希は夫婦の域にも見えますが。その仲良し兄弟のような生活、それはそれで安定していても、いつまでもそこに踏みとどまってはいられない。柚希は子供から大人への成長期、塁人は贖罪と煩悩を解放。過去の痛々しさ、それが物語のベースであっても、その過去以上に傷つけられる事も傷つける事もないのでホッとします。不安定な土台で育った塁人と柚希ですが、歪みが無く、お互いに乞いているだけ、こちらも真っ直ぐ愛おしいと思う。この二人だけでなく、サポートする元児童福祉士の椎名も、柚希のクラスメイトの英太も穏やかで優しい。だから、作品が暖かい。椎名と英太は、人として大好きになったキャラでした。
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