ニアリーイコール
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ニアリーイコール

凪良ゆう/二宮悦巳

ニアリーイコール…優しく素敵な曖昧さ

2023年12月11日
まだ独り立ちするには早すぎた仁居の置かれた立場は、理不尽で孤独を強いる残酷なものだと思います。そんな時に心を許せる相手に出会ってしまったら、子供ではなくても未成年の少年ですから、依存的になっても致し方ないだろう気はします。だからと言って、一方的に佐田が悪いとも言えない…というか、誰も悪くないから難しいですね。
「愛してもらうためには愛しすぎてはいけない」と、寂しさに蓋をして孤独に耐える仁居の姿が痛々しかったです。他にも「死にたいわけではなく、生きていけない」というセリフから耐え難い苦痛が伝わってきました。こういった矛盾するような心理描写や、登場人物それぞれに似たところがある点など、タイトルに絡めた表現が心に響きました。『ニアリーイコール』つまり近似値(≒)ということですね。完全にイコールではないが、限りなく近い…素敵な言葉だなと思いました。
仁居と同じではなくても、同じように辛い思いをして何年も引き摺っていた佐田、それぞれに違う苦しみを抱いていた国立や国立の妹、皆が大きな傷を負いながらも過去の自分を認めて許し、幸せになろうとする希望に満ちたラストに感動しました。
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