たまらないのは恋なのか
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たまらないのは恋なのか

空華みあ

少女漫画だからこそ深みが出たBL

ネタバレ
2023年12月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 他の方もレビューしていますが、この漫画を「少女漫画みたい」という理由で一蹴し、評価を下げるのはもったいないと思います。この漫画は別冊フレンドでの連載なので、正真正銘、少女漫画の星のもとでうまれたBLなのです。悪しからずそれを理解した上で読んでみると、やはりこのフィールドでしか得られない栄養がありました。人が人を好きになって、そこに特別な理由などなくても、ちょっとした強引さに訳もわからずドキドキしたり、「相手もおなじ気持ちだったら嬉しいな」と願ってしまう。そんな独特のもどかしさこそが、少女漫画にしかない純粋さを演出するのだろうと思います。そしてこの漫画は、“本来のポジションが女の子ではなく男の子でも胸キュンできるから良い”のではなく、“同性だからこそよかった”と胸を張って主張したいです。なぜなら、同姓であることで、【女ならば】【男だから】の固定概念から解放され、純粋に【この人だから】という軸で感情が研ぎ澄まされていくからです。この漫画に出てくる受けは、自分の存在価値を認めてくれる人や、安息の居場所を求めている。『誰かに愛されたい』、そんな欲求を抱きながら野良犬のような生活をし、そんな中で「君は君のままでいいんだよ」とありのままを受け入れ包み込む攻めの存在は、受けにとって恋愛感情よりももっと意味のあるものだっただろうな、と感じました。それが同性同士だっだからこそ、より一層深みが出たなと心から思います。後に、親からも大切にされず、自分自身の価値を見出せないままでいた受けが、攻めと出会い同じ時間を過ごしていくうちに「自分も幸せになっていいのかな?」「その時となりに、こいつも居てくれるかな?」と、攻めとの未来を切望できたことが、なにより嬉しかったです。そして言うまでもなく受けがかわいすぎます。両思いカプのむず痒さがそれを加速させている。わたしは、悲しいくらいに優しい受けの幸せをただただ祈るだけであります。迷ってる人がいたら、ぜひぜひ読んでみて欲しいです。
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