穢れのない人【コミックス版】
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穢れのない人【コミックス版】

虫飼夏子

赦しと愛を乞うお話

ネタバレ
2023年12月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙、タイトル、帯…全ての視覚から得る感性に惹き付けられて購入。表現力がとても上手い。後味の悪さを予感しながら、読みたい気持ちが抑えられない。表題のデビュー作と短編2作品収録。人を選ぶ作品で、強烈に畳み掛ける感性にひれ伏す。
秋鷹の慈愛ぶりは、神をも超える。冤罪を経験し、人間の愚かさ醜さ歪みを骨の髄まで叩き込まれても、赦し正しく愛せる聖人。
木場が壊れたまま心細さを抱えて彷徨い、寂しさと執着を肥えさせたモンスターに。自分を誤魔化して、秋鷹を神父という立場で迎える計画の闇が深い。
秋鷹と木場の対比表現が上手い。初めて教会に訪れ、地を這うようなどん底から…生死を揺らいでる足元から…救いあげてくれる大事な場面や神父という立ち位置。
更に木場が大人へと成長する事で養父から拒絶されたのに対し、秋鷹といる事で幼児退行のように幼さを解放しながらやり直していく過程もいい。
見放されないように必死に縋り、赦しと愛を乞う2人の話。
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