僕のパパになってください
」のレビュー

僕のパパになってください

緒川千世

僕でも私の…ママでも。深いお話でした

ネタバレ
2024年1月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ うー…上手く言葉になりませんが、この作品を読んで涙した人がいたら、よく今まで頑張ってきたねと言ってしまいたくなる様なそんな物語でした。

主人公、春樹30歳、システムエンジニア。それだけで、色んな当たり前を想像してしまいます。
だけど30歳って何だろう…と。

人が人に成るのに一番大事なのが、幼少期なのだとしたら。主人公春樹があの歳でパパを求めたのは、息子の性癖を知って受け止められなかった両親が原因じゃなく、幼少期の彼の環境が原因だったのかな?と。

仕事が忙しい父と母の間を、母が求めていた理想的な家庭を支える為、料理の手伝いや野菜嫌いの息子、妹想いの兄も演り、勉強も頑張った。
そして、本当の春樹は何が好き?したい事は?と聞かれても、幼少期に良い子を演じ終わった大人春樹には、もう自分が何が欲しいのかも分からない。

そんな彼の、幼少期のやり直し。

冒頭の”冷たい手”でそのきっかけを口にした春樹が、少しずつ灰田さん演じるパパのおかげで本来の彼になって行く物語は、ジーンとしました。

個人的に良かったのは、パパを演じる灰田さん。何を思って結婚をし家庭を作って、今そんな優しいパパを演じているのだろう?と。

灰田さんの素の顔はちらっとしか出てきませんが、その時の表情がとても良いです。ベランダで煙草を吸っていた時の彼が素の灰田さんなのかな?と。春樹がどんな青年なのかを見極められる程の人生を歩んできた、灰田さん。妻の顔は最後まで出てきません(離婚時の彼を想像してしまった。親権争いをしたのかな…とか)

灰田さんが春樹に言った、本当の自分を分かってもらう努力を放棄するなと。じゃぁ、本当の灰田さんは?と(…出てきません)

初日の出を見て涙する灰田さん。娘を想ってだと思いますが…懺悔も感じます。最終コマの灰田さんの表情(好きです)。なんとなく、春樹との理想の親子関係を終わる決意をしたのかな?と思いました。そして春樹はこれから、本当の灰田さんと出会うのかなと。

私の中ではハピエンなのですが…どうだろう(灰田さんのセクシャルは関係なく、)

結婚式に出席できない春樹に大泣きでした(さらっとそれを描写する作者が凄いなと…)良かったです。
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