ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する
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ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する

木乃ひのき/雨川透子/八美☆わん

キャラ達の心理が考え尽くされている!

ネタバレ
2024年1月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ とくにアルノルト殿下の精神的に未熟な部分と彼の言動の整合性が取れていて、とてもリアルだと思います。殿下は過去のトラウマや自分の弱み・恐れているものを、ある程度自分の中で整理できている人です。なのでよく少女漫画でみるような、殻に閉じこもっている(自分から人間関係を築かない)不愛想なイケメンヒーローではありません。違和感を抱いたり、面白そうと思った人(例えばリーシェ)に対しては自分から積極的にアプローチできるくらいの社会性や自信はある。特にビジネス的・政治的なメリットがある関係性は「自分は戦略的に動いてる」という精神的なクッションがあるからより抵抗なく(傷つくことを恐れず)飛び込める。

でも、パーソナルな人間関係にはそういう合理的なクッションは普通存在しない。はて、追い詰められたように見えるが、殿下はそんな心理と向き合えるほどの強さはない。なので殿下は「どんな人間関係も自分は無慈悲に戦略的に動いている」というクッションを設けてる。これを掲げている以上、傷つかずに済むが、リーシェの行動によってはリーシェを切り捨てなければならないことも意味する。でもそれに抵抗を覚え始めてる。かといってその恐れに向き合えるほどの強さはまだ身につけてない。そこから生まれた懇願のような命令・・『俺に お前を排除させるなよ』。

そんな複雑に未熟な殿下が、よく少女漫画に出てくるような天真爛漫なヒロインの、素直な(シンプルな)言動だけでほだされるような人ではない・・ということを作者は良く分かってらっしゃる!!このヒロイン(リーシェ)は知性や能力があるだけでなく、絶望も苦労も程よく経験した精神的に成熟している女性。考えてみればループの結果 精神年齢45歳くらいですしねw リーシェは始めから、どんなときも、懇願のような命令にさえも、殿下に〈ただただ素直で愛情のこもった言葉をなげかける〉みたいなことはしてない。いつも殿下のことを真正面から向き合っていると示しつつも、殿下が予想もしなかったような見解・考え方・気付きを交えた言葉を返している。殿下の感情、理性、価値観の全部にインパクトを与えるような言動によって初めて殿下も変わりつつある。でも、その変化のスピードもまた早すぎずリアルでいい!とにかくとても大好きな作品です・・。
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