蟷螂の檻
」のレビュー

蟷螂の檻

彩景でりこ

「蟷螂の檻」の意味をひたすら考えさせられる

ネタバレ
2024年1月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ とにかく典彦のサイコパスっぷりが凄かった…!!
傷つき貶められるところが見たい、全ての感情、憎しみすら自分に向けてほしい…
底なしの執着っぷりには圧巻でした。
自分には1ミリも理解はできないけど、恋や愛などという普通のものではない、もっと歪んだ感情、異質な依存に感じられました。
それを憎しみながらも受け、満たされる育郎…………
もう長年かけて身体からわからせるようなのがエチくてエチくてエチすぎた……

あの屋敷から逃れたことも、育郎にとっては救いではなく。
さと子のように強く前に進むでなく、飯田の言う「あたりまえの幸せ」でもなく、典彦の檻を選んだ。
お互いしかいない、お互いに囚われた檻の中。2人にしか見えない世界。それが彼らの「幸せ」であったということなんだろう。
育郎、蘭蔵のあの笑顔を見たら、幸せなんて人それぞれ、その人にしか分からないなって。

ラストは格子窓の外から覗く少年といい、育郎の表情といい、作品冒頭の座敷牢の蘭蔵とリンクしていて鳥肌立ちました。まさにタイトル通り……

普段はハピエン好きな自分ですが、たまにはどこまでも仄暗い、闇の中救いを探りながら読み進める作品も、なかなか読み返せないけどいいものですね。

特典の『~中の人』は、『蟷螂の檻』がドラマで俳優が演じてる設定。明るいコメディなので、わたしは全部本編読み終え、浸った世界観から抜け出した後読みました。しんどい本編から一転、こういうノリも好きです!
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