このレビューはネタバレを含みます▼
…が濃厚に詰まった一冊かと。わりと最近の作品(といっても十年前以降)だからか4作品全て初見。新鮮でした。
表題作「艮」は鬼門に纏わる障りのお話。主婦があらゆる厄に見舞われながらも健気に頑張り障りを回避するんですが、脱獄犯の男の話も並走するのでそっちばかり気になっちゃいました。まさかの解釈が面白かった。
「死神」は看護師の体験談を記者が取材する形で、死際の患者の様相が客観的に語られます。タイトル通りの死神ではなく “お迎え” と形容する各種ケースが興味深い。
「時計草」は主人公から見た一風変わった ”あの世“ の話。死神と共に先生の死世感が色濃く出ている気がします。
「ドラゴンメイド」だけは前出3作とは毛色が違い、中世フランスのファンタジックな逸話でした。お国は違えど鶴の恩返し的なやつ…ただし恩も売ってない上に過失犯ですけど良いのかな。龍女と書いてドラゴンメイドってのが格好良い。時祷書なる物があるのを知れて良かったです。
何十年と経っても変わらぬ、山岸先生が手掛ける怪異の面白さ。次なる供給を心待ちにしています。