ノっぴきならぬ
」のレビュー

ノっぴきならぬ

こふで

映画を見たような満足感。星5では足りない

ネタバレ
2024年2月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ いや……すごい。作者さんは天才の域を超えていて大天才だと思う。本当に本当に買ってよかったし、江戸物が嫌いじゃない方は全員読んで欲しいくらい人に勧めたいです。

ワイルドな色男×いいとこ育ちの美人な江戸ものです。かつて情を交わしあった二人が、七年後に再会して愛を育む物語です。
まずそもそも日本の歴史物ってすごく好きなのですが、数が少ない。特に明治大正くらいなら見た目もオシャレですが、江戸物となると男は基本的に青天ですよね。BLの題材にするにはなかなか難しいのは分かります。
しかしこちらの作品は街並み、家、着物、髪型から全てきちんとファンタジーじゃない江戸らしさがあります。だからといって重苦しくなく、美しい描写と絵柄で楽しく読めます。
そして江戸物となると、青年×青年ものはほとんど見かけません。やはり稚児文化とか男色文化から、受けがカワイイ系な事が多いのですが、この作品は色男×色男なので本当に目の保養でした。

絵や世界観が素晴らしいだけでなく、人物描写も素晴らしい。受けは美人だが弱気なところがあり、それが美しい。攻めは男前なのですが、だからこそ身を引こうとする潔さがある。奉公人たちも皆人間くさいんですが人情に溢れていて、娘のお天ちゃんはおてんばだけどとても良い子で可愛い。全ての登場人物がその時を生きている感じがします。
また作者さんの描写力の素晴らしさ。テンポよく話が進み、場面転換も急な所もあるのにそれを感じさせない。わざとセリフが無いコマがあっても、表情から感情が読み取れるのでその情緒が美しい。凄い。

受けの悩みや葛藤、それを受け入れようとするが難しい攻めの潔さ、感情が揺さぶられました。BL作品を読んでいて、ここまで感情が揺さぶられたことがない。泣けるとかでは無かったんですが、最後のシーンは心がギュッとなって感動すら覚えました。1本の映画作品を見せてもらったような、そんな気持ちですらあります。

続編も決まっているのがとても嬉しいです。変に話が続かず、一応この巻で綺麗に終わっているのも良かった。
多分シーモアの感想で一番長く書きました。それくらい好きです。作者さん、素敵な作品をありがとうございますすぎる。
また最初から読み直してきます。
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