烈火の血族
」のレビュー

烈火の血族

夜光花/奈良千春

答えのない学問・哲学と結びつけた深い物語

ネタバレ
2024年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 語彙力を疑われそうですが…「面白い」「凄い」しか出てきません。魔法が使える設定なので完全に異世界ものなのに、破綻なく広範囲に作り込まれた世界観、愛憎・善悪入り乱れる人間関係や人間心理の複雑さ、容赦なく縺れ合い絡まり合う運命の糸など、とにかく見応え&読み応えがありました。見応えというのは、奈良先生のイラストがイメージぴったりで細部まで美麗なので、イラストのないシーンまで自力で想像できるからです。
全体的な雰囲気で言うと、主人公達に運命とか業みたいなものが容赦なく襲いかかるという点で『薔薇』に近いかなと思います。何度も「どうして」という想いに飲み込まれて辛いシーンも多くありました。若干ホラーテイスト有りな点も似ていますが、こちらの方がややマイルドな気がします。どちらも未読という方は、こちらから読んだ方が心に優しいかもしれません。貴族とか西洋風な雰囲気がある点、大切な人二人の間で揺れる主人公という点では『少年は神』シリーズとも似ている気がします。
時々、ストーリーと関係のあるようなないような絶妙なタイミングで提示される哲学じみた質問…幾つかある中の最初の一つとマホロの出した答え、これが後々再燃するとは思わずで、巧妙な伏線の貼り方に感動したし、深いなと思いました。
完結表示はありませんが、7巻で一応の完結となっています。先生の作品は初めてという方以外の「面白さを知ってる人」であれば、まず間違いなく(面白さのあまり)途中放置はできないと思うので、全巻揃えてからの一気読みをオススメします。
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