石榴の花・修正版
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石榴の花・修正版

ARUKU

朱く鮮烈な柘榴の花が実となる時

ネタバレ
2024年2月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヤクザの愛人の息子•真宏は早くに母親を亡くし、その時初めて父親のことを知りました。正妻には真宏と同い年で3か月年下の弟•優也がいます。まだ幼い頃、弟と知らずに一緒にかくれんぼをした時、母親は相手が優也と知るとかくれんぼの途中なのに真宏を連れて帰ったのでした。ある日、突然に腹に傷を負った優也が真宏の家に転がり込んできます。優也の背には派手な刺青が入っており、優也は針と糸で簡単に傷を縫ってくれと頼むのでした。それから優也は真宏の家を頻繁に訪れるようになります。鮮やかな朱色をしているのに実のならない真宏の家の柘榴の花は、ヤクザという破天荒な生き方をしなくてはならない優也の孤独と同時に二人に流れる同じ血の色に重なります。それはまた、かくれんぼの相手がいつの間にかいなくなっていた幼い日の寂しさも呼び起こすのでした。やがて、ならない筈の柘榴の実が紅く大きく結実します。強烈な罪悪感と背徳感、未来への不安、そして限りない甘さが鋭く描かれています。ギリシア神話や鬼子母神伝説で不吉に扱われる柘榴の、花が咲き、散り、実がなるまでのお話です。
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