君の夜に触れる【単行本版】
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君の夜に触れる【単行本版】

もりもより

繊細な絵から紡ぎ出される儚くも優しい物語

ネタバレ
2024年3月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 昭和レトロをまとった様な雰囲気。特に佳澄の服装がそれを彷彿とさせますが現代ものでした。
何と言っても、瞳の描写が美しい。佳澄が時折みせる泣いてしまいそうな儚い笑顔は、一瞬はっとするものがあり、好きを詰め込んだ一冊というだけあって、丁寧に描かれる線の1つ1つに作者様の思いが込められているのを感じました。
父の手足として暗殺を生業とする千夏と盲目の佳澄。接点など全くない2人の出逢い、そして再開。過去の証拠隠滅の為近づいた千夏が清らかで穢れのない佳澄の人柄に触れ、優しい時間と共に少しずつ変化が訪れ‥。と同時に闇の中にいる自分との対比に苛まれるんですが、なにも言わず受け止めてくれる佳澄に救われ、こちらもその笑顔に癒されました。
殺しの仕事以外で初めて自分を必要としてくれる佳澄にどんどん依存していくんですが、佳澄にとっても千夏が色んなしがらみから解き放ってくれる存在となり、惹かれていく過程が丁寧で美しい。
イルカとウミヘビのお話ともうまく結び付いていて、2人の関係性を示唆しているようでした。
また、視覚の情報が得られない分、その他の五感が敏感で、特に手の感触や輪郭で千夏の顔を見たいという表現はこの作品ならではだと思います。


父との決別を踏み切って全てが明らかになった後、逃避行する様に飛び出した先で結ばれる2人も印象的でした。1つ1つの触れ合いが熱を帯び、ゆっくり存在を確かめる様なひととき。そして無自覚で煽り上手な佳澄さん!かっかわ←声がでない
夜明けを海を迎え、心からの笑顔に安堵するエンディング。


そして小冊子へと続くのですが、ここでも積極的で可愛い佳澄さんがお目見えします!!煽り運転に動揺する千夏くんがっ!佳澄を包み込むような体格差も萌えます!血糖値が急上昇しそうな甘味に私もクラクラでした(笑)
1巻が夜明けを迎えるまでの道のりだっただけに、2人の甘~い生活を堪能できます!!


そして、グレーだった父親との関係が少し見えてきた番外編。家族愛を主軸に直接的な表現はありませんでしたが、お兄さんの墓参りで何か変わったと思いたい一幕でした。クマが薄くなってる千夏に安眠できてるんだなと。あと屋台での千夏のデレも必見です!佳澄にも見て欲しかった!!と思うのもつかの間身体で十分に伝わってました! 千夏の笑顔を引き出す天然ものの煽り上手さんには敵いません~!!
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